
<こんな疑問のある方におすすめ>
・防水工事を検討中でトーチ工法が気になる
・トーチ工法の費用相場はどれくらい?
・トーチ工法と熱工法はどう違うの?
トーチ工法はアスファルト防水の一種で、トーチバーナーでアスファルトを溶かしながら防水層を形成するものです。今回はトーチ工法のメリット・デメリットや費用相場、施工手順を解説します。ぜひ参考にしてください。
アスファルト防水のトーチ工法とは?
アスファルト防水には、常温工法や熱工法、トーチ工法といった工法があります。
トーチ工法とは、アスファルトを染み込ませたルーフィングシート(防水材)をトーチバーナーで炙り、アスファルトを溶かしてシート同士を貼り重ね、防水層を形成する工事方法です。
トーチ工法で使用されるルーフィングシートは、「改質アスファルトシート」といいます。そのため、「改質アスファルトシート工法[a]」と呼ばれることもあります。
需要の高いアスファルト防水の工法
トーチ工法は、アスファルト防水の中でも近年需要が高まっている工法です。
トーチ工法はアスファルトを溶かしてシートを貼り重ねるため、シート同士の密着性が高く、防水機能が高い点が特徴です。同じくアスファルトを溶かす熱工法は大掛かりな溶解釜が必要で、施工中に臭いや煙が発生します。対してトーチ工法は溶解熱が必要なく、また熱工法ほどの煙や臭いはありません。
周辺環境への影響が少なく、また火災ややけどの危険も低いことから、アスファルト防水の中でも比較的人気となっています。
費用相場と工期
トーチ工法の費用相場と工期は以下の通りです。
工法 | 単価相場(1m2あたり) | 工期 |
トーチ工法 | 5,500~7,000円 | 6~10日 |
施工範囲によって工期は微妙に異なります。
トーチ工法が適した場所
トーチ工法はルーフィングシートを使用するため、複雑な形状の場所には向いていません。
トーチ工法が適した場所として、広くて平らな場所が挙げられます。具体的にはビルやマンションの屋上、共用廊下、RC造の住宅の陸屋根などです。
トーチ工法のメリット
トーチ工法には、以下のようなメリットがあります。
- 耐用年数が長い
- 耐候性・耐寒性に優れている
- 周辺環境への影響が少ない
- 大掛かりな設備が必要ない
1つずつ見ていきましょう。
耐用年数が長い
アスファルト防水の耐用年数は15~25年と長く、その中でトーチ工法は特に耐用年数が長いといわれています。ルーフィングシートを溶かしたアスファルトで貼り重ねていくトーチ工法は、シートを隙間なく何層も重ねていくため、密着性が高く防水効果が優れているというメリットがあります。
耐候性・耐寒性に優れている
トーチ工法に使用される改質アスファルトシートは、アスファルトを浸透させたシートに、天然アスファルトやポリマーなどの材料を加えたものです。改良を重ねたことで従来のルーフィングシートよりも耐候性や耐摩耗性がアップしており、耐久性が高くなっています。
周辺環境への影響が少ない
トーチ工法は、熱工法のように溶解釜でアスファルトを溶かすのではなく、トーチバーナーで局所的にアスファルトを溶かします。そのため熱工法ほど煙や臭いが発生せず、周辺環境への影響が少ない点がメリットです。
しかし注意しなければいけないのは、周辺への影響がゼロではないことです。熱工法ほどではないにしろ、少なからず煙や臭いが発生する点に留意しましょう。
大掛かりな設備が必要ない
トーチ工法と同じくアスファルトを溶かしてシートを貼り重ねる熱工法は、大きな溶解釜が必要です。溶解釜を設置できるスペースが必要になるため、狭い場所では施工できないというデメリットがあります。
対してトーチ工法で使用するのは、一般的な大きさのバーナーです。熱工法のような大掛かりな設備を使わず施工できる点はメリットといえるでしょう。
トーチ工法のデメリット
メリットが多い一方で、トーチ工法には以下のようなデメリットも存在します。
- 複雑な部位への施工が難しい
- 火災やケガのリスクがある
- 施工難易度が高い
一つずつ見ていきましょう。
複雑な部位への施工が難しい
トーチ工法では、シート状の防水材(ルーフィングシート)を貼り重ねて防水層を形成します。そのため凹凸がある場所など、複雑な形状の箇所への施工が難しいというデメリットがあります。複雑な形状へ継ぎ目なく防水層を形成するなら、ウレタン防水などの塗膜防水がおすすめです。
火災やケガのリスクがある
トーチ工法は熱工法ほどではないといえ、高温で炙ったアスファルトを扱うため、どうしても火災やケガのリスクがあります。
またトーチ工法だけに限らず、防水工事は高所での作業が多いため、落下などのリスクもゼロではありません。安全対策をしっかりした上での施工が大切です。
施工難易度が高い
トーチバーナーで防水材を炙る際、むらができると接着不足になり、耐久性が落ちたり後々の雨漏りの原因になったりします。アスファルトを均一に熱し、伸ばして接着するには、熟練の技術が必要です。
トーチ工法の施工手順

トーチ工法でマンションの屋上防水を行う場合、以下の手順で施工します。
- 既存のシートを剥がす
- 下地調整材を塗る
- 改修用ドレンを設置する
- アスファルトシートを貼る
- トップコートを塗る
それぞれ解説します。
既存のシートを剥がす
まず、マンションの屋上の立ち上がり部分に残っている古い防水シートを剥がしていきます。屋上の平らな部分は既存のシートをそのまま残しますが、立ち上がり部分は水が浸入しやすいためシートの撤去が必要です。
古い接着跡が残っていると下地に影響を与えるため、ヘラ状の道具でこそぎ落します。
下地調整材を塗る
次に、新しいルーフィングシートがよく接着するよう、下地調整材を塗布します。立ち上がり部分から屋上の平らな部分まで、まんべなく塗っていきます。
改修用ドレンを設置する
既存ドレンの内側に改修用ドレンを設置し、劣化している排水機能を復活させます。ドレンが適切に機能しないと水漏れや水溜まりが発生してしまうため、防水工事の際には欠かせないステップです。
アスファルトシートを貼る
屋上全体に改質アスファルトシートを貼り付けていきます。シートの裏面と地面をトーチバーナーで炙り、アスファルトを溶かしながら貼り重ねます。炙る箇所は熱くなるため、丸まっているシートを足で転がしながら溶かしていきます。
トップコートを塗る
最後に仕上げとして、トップコート(保護塗料)を塗っていきます。トップコートは紫外線や雨風から防水層を保護する役割があります。防水性能を長持ちさせるためには、トップコートは欠かせません。
平らな場所はローラーで、立ち上がり部分など細かい箇所はハケを使い、丁寧に塗り広げていきます。
トーチ工法と他のアスファルト防水工法の比較
トーチ工法と他のアスファルト防水の工法を表で比較しました。
工法 | 単価相場(1m2あたり) | メリット | デメリット |
トーチ工法 | 5,500~7,000円 | ・密着度が高く防水性能に優れている・熱工法ほど煙や臭いが発生しない・比較的コストが安い | ・複雑な形状の場所には施工できない・高い施工技術が必要 |
常温工法 | 7,000~9,000円 | ・火を使わないので安全性が高い・比較的狭い場所でも施工できる・煙や臭いが発生しないので周辺への影響が軽い | ・トーチ工法や熱工法よりも防水性能は劣る |
熱工法 | 6,000~8,000円 | ・アスファルト防水の中でもっとも歴史が長い・短時間で硬化するので工期が短い・密着度が高く防水性能に優れている | ・溶解釜を設置できるスペースが必要・煙や臭いが発生する・火災ややけどの心配がある |
どの工法を採用するか、業者とよく話し合い、現場の状況をきちんと把握して決めましょう。
アスファルト防水のトーチ工法が向いているケース
アスファルト防水のトーチ工法が向いているケースとして、以下が挙げられます。
- アスファルト防水を採用したいが、なるべくコストを抑えたい
- 積層工法を選びたい
- 耐久性が高い工法を選びたいけど、周辺環境にも配慮したい
トーチ工法だけに限らず、アスファルト防水はルーフィングシートを貼り重ねて層をつくる「積層工法」の防水方法です。層が厚い分、防水性能の高さが期待できます。
トーチ工法の施工業者を選ぶポイント
トーチ工法の施工業者を選ぶポイントとして、以下があります。
- トーチ工法の施工実績が多いか確認する
- アフターサポートや保証制度が充実しているか調べる
- 相見積もりをして適正価格の業者を探す
トーチ工法は、技術力が必要な工法です。トーチ工法を施工してきた経験が豊富な業者であれば、安心して任せられるでしょう。
トーチ工法はメリットが多い
トーチ工法は、近年需要が高まりつつある防水工法です。防水性能や耐久性の高さと、周辺環境への影響の少なさを両立するトーチ工法は、ビルやマンションの屋上防水にぴったりな防水方法といえます。
ただし、施工には一定の技術力が必要なため、依頼する業者を慎重に見極めましょう。施工業者を選ぶ際は、少なくとも3社以上を相見積もりすると、費用相場を把握できます。
防水の専門家に工事を依頼したい方は、ぜひ「屋上防水プロ」をご活用ください。