
<こんな疑問のある方におすすめ>
・アスファルト防水を採用すべきか迷っている
・アスファルト防水の費用相場はどれくらい?
・アスファルト防水の工法って何があるの?
アスファルト防水は、ビルやマンションの屋上防水によく採用される、耐久性の高い防水方法です。今回はアスファルト防水の工法別のメリット・デメリットや費用相場、気をつけたい劣化サインを解説します。ぜひ参考にしてください。
アスファルト防水とは?
アスファルト防水は、100年以上の歴史を持つ古くからある防水方法です。100年以上施工され続けていることから、いかに根強い人気があるかわかります。
耐久性に優れた防水方法
アスファルト防水は、現在よく使われる4つの防水方法(ウレタン防水・FRP防水・シート防水・アスファルト防水)の中でもっとも高い耐久性を誇ります。
アスファルト防水は、液状に溶かしたアスファルトを染み込ませたルーフィングシートを重ねて防水層を形成します。「積層工法」と呼ばれるこの形成方法は、アスファルトシートを二層以上重ねる分耐久性が高く、耐用年数も長い点が特徴です。
ビルやマンションに使われる
アスファルトに密着させながらシートを重ねていくアスファルト防水は、ビルやマンションの屋上など、広くて平らな場所でよく施工されます。他方、他の防水工事と比較して重量がある分、耐久性に乏しい建物や木造の建物の防水には向いていません。
アスファルト防水の工法は3種類
アスファルト防水には、主に以下の3種類の工法があります。
- 常温工法(冷工法)
- トーチ工法
- 熱工法
それぞれの特徴を見ていきましょう。
常温工法(冷工法)
常温工法(冷工法)は自着工法とも呼ばれる工法です。ルーフィングシートの裏側にゴムアスファルトの粘着層をコーティングし、シートを交互に重ねて貼り合わせていきます。後述する熱工法のように火や熱を使わないため、アスファルトが溶ける臭いや煙が発生しません。そのため、住宅が密集する都心部でよく施工されます。
常温工法のメリット・デメリット
常温工法のメリットとして、以下が挙げられます。
- 煙や臭いが発生しないので環境にやさしい
- 火を使わないので安全性が高い
- アスファルトを溶かす手間がかからない
- 大掛かりな施工器具がいらず比較的狭い場所でも施工できる
常温工法は熱工法のようにアスファルトを溶かす大掛かりな機械がいらないので、比較的狭い場所でも施工できます。
一方で常温工法には以下のようなデメリットもあります。
- 他の2つの工法に比べると防水層の密着度が低い
- シートを何枚も貼り重ねるので重量が大きくなる
常温工法は熱でシートを貼り合わせるわけではないので、他のトーチ工法や熱工法に比べてどうしても防水層の密着度が低く、防水性能が劣ってしまいます。また重さのあるシートを貼り重ねる分、屋上の耐久性にも注意しなければいけません。
常温工法の施工手順
常温工法は、以下の手順で施工されます。
- プライマーを塗布する
- ルーフィングシートを貼り重ねる
- ジョイント部分を施工する
- シートの継ぎ目にシーリングを打設する
- 水張実験を行う
- トップコート(保護塗料)を塗る
シートの継ぎ目部分に空間があると、雨水が浸入する原因となるため、シーリングでしっかりと埋めていきます。
トーチ工法
トーチ工法は、トーチバーナーと呼ばれるバーナーでルーフィングシートの裏面を炙り、アスファルトを溶かして下地に貼り付けていく防水工法です。
トーチバーナーは一般的なバーナーのサイズなので、比較的コンパクトで大掛かりな設備が必要ありません。防水効果が高くコストパフォーマンスにも優れていることから、多くの現場で施工されています。
<h4>トーチ工法のメリット・デメリット</h4>
トーチ工法の主なメリットは以下の通りです。
- 大掛かりな機械や周辺設備がいらない
- 局所的に炙るのでアスファルトが溶ける臭いが広がりにくい
- 熱でルーフィングシートを貼り重ねるので密着度が高く防水効果が高い
- コストパフォーマンスに優れている
一方で、トーチ工法には以下のようなデメリットもあります。
- 施工には高度な技術が必要
- 広い場所でないと施工できない
トーチ工法は局所的とはいえ火を使うため、周囲に燃えやすいものがあると施工できません。そのため、周囲の安全が確保できる広い場所でないと工事ができないというデメリットがあります。
トーチ工法の施工手順
トーチ工法は、以下の手順で施工されます。
- プライマーを塗布する
- トーチバーナーで炙りながらルーフィングシートを貼り付ける
- 水張実験を行う
- トップコート(保護塗料)を塗る
トーチ工法は、バーナーでシートの裏面を均一に溶かす技術が必要です。そのため、3つの工法の中でも比較的難易度が高い工法といわれています。
熱工法
熱工法はアスファルト防水の中でもっとも古い工法で、長い歴史を誇ります。熱工法では、アスファルトを「溶解釜」と呼ばれる釜で溶かし、ルーフィングシートを貼り重ねる接着剤として使用します。アスファルトが冷えて固まることで防水層を形成します。昔から行われてきた工法ですが、近年では環境への配慮から施工される機会が減っています。
熱工法のメリット・デメリット
熱工法の主なメリットは以下の通りです。
- 100年以上の歴史がありノウハウが蓄積されている
- 短時間で硬化するので工期が短い
- アスファルトを溶かしてシートを貼り付けるので防水性能が高い
一方で、熱工法には以下のようなデメリットもあります。
- 火災ややけどの心配がある
- 臭いや煙が発生する
- 溶解釜など大掛かりな設備が必要
溶解釜は220~270℃もの温度に達するため、常に火災ややけどの心配がつきまといます。また、釜を設置するスペースが必要で、広くて平らな場所でないと施工できません。
熱工法の施工手順
熱工法(露出防水)は以下の手順で施工されます。
- プライマーを塗布する
- 溶解釜でアスファルトを溶かす
- 断熱材を貼り付ける
- ルーフィングシートを貼り重ねる
- 水張実験をする
- トップコート(保護塗料)を塗る
水張実験とは、屋根全体に水を張り室内への漏れがないか調べる工程です。防水工事がしっかり行われたか確認する重要な作業を指します。
アスファルト防水の費用相場

アスファルト防水の費用相場は工法によって異なりますが、おおむね5,000~9,000円/m2といわれています。
工法別の単価相場を以下にまとめました。
工法 | 単価相場(1m2あたり) |
常温工法 | 7,000~9,000円 |
トーチ工法 | 5,500~7,000円 |
熱工法 | 6,000~8,000円 |
トーチ工法がもっとも安く、常温工法が高い傾向があります。費用を抑えてアスファルト防水を行うなら、トーチ工法がおすすめです。
アスファルト防水の劣化サイン
アスファルト防水の主な劣化サインとして以下が挙げられます。
- 保護塗料の剥がれ
- コンクリートのひび割れ
- 防水層の口開き
- 防水層の膨れ
- 防水層の押し出し
- 伸縮目地の突出
それぞれどういったものなのか見ていきましょう。
保護塗料の剥がれ
保護塗料の剥がれは、アスファルト防水に限らずトップコートを塗布するすべての防水工事にいえます。
雨風や紫外線などに長期間さらされると、トップコートが少しずつ摩耗していきます。トップコートは防水層を保護する役割があるので、トップコートが剥がれると防水層の劣化が一気に進んでしまいます。
コンクリートのひび割れ
温度変化によってコンクリートが膨張・縮小を繰り返し、ひび割れが起こってしまう現象です。屋上をひんぱんに人が行きかったり、長期間荷重がかかったりしても発生します。
防水層への影響は少ないですが、メンテナンス時には改修が必要です。
防水層の口開き
経年と共にルーフィングシートの継ぎ目が徐々に開いてしまう現象です。開いた場所から雨水が浸入し、防水層を傷める原因となります。早急なメンテナンスが必要です。
防水層の膨れ
防水層の内部に発生した結露が太陽光の熱で温められ、水蒸気になり膨れとなる現象です。膨れを放置していると防水層が破れてしまい、さらに劣化が進んでしまう恐れがあります。膨れが発生したら、早めにメンテナンスを行いましょう。
防水層の押し出し
温度変化によってコンクリートにひび割れが起き、その亀裂から防水層が押し出される現象です。防水層の口開きや破れ、剥がれにつながる劣化なので、なるべく早めの修繕が必要です。
伸縮目地の突出
伸縮目地は、温度変化によるコンクリートの膨張・縮小の衝撃を吸収するために設けられています。しかし長期間雨風や紫外線にさらされると、伸縮目地自体が劣化し浮き上がってきます。
伸縮目地が突出すると、コンクリートの膨張・縮小の衝撃がそのまま防水層に伝わり、負荷となって劣化を早めてしまいます。伸縮目地も、こまめにメンテナンスしたい部分です。
アスファルト防水と他の防水工法の比較
アスファルト防水と、ウレタン防水・FRP防水・シート防水のそれぞれの耐用年数や費用相場、向いている場所を表にして比較しました。
防水方法 | 耐用年数 | 単価(1m2) | 工期 | 向いている場所 |
アスファルト防水 | 15~25年 | 常温工法:7,000~9,000円トーチ工法:5,500~7,000円熱工法:6,000~8,000円 | 6~10日 | ・ビルやマンションの屋根、屋上 |
ウレタン防水 | 密着工法:7~10年通気緩衝工法:10~15年 | 密着工法:4,000~6,000円通気緩衝工法:5,000~7,000円 | 3~7日 | ・ベランダ、バルコニー、屋上 |
FRP防水 | 10~12年 | 6,000~9,000円 | 1~2日 | ・ベランダ、バルコニー |
シート防水 | ゴムシート:10~15年塩ビシート:10~20年 | 4,000~8,000円 | 1~3日 | ゴムシート:屋根、屋上塩ビシート:屋根、ベランダ、バルコニー |
アスファルト防水は他の防水方法と比較して、工期は長めです。しかし耐久性はもっとも高く、耐用年数が15~25年と長い点が特徴です。
アスファルト防水の改修方法は2つ
アスファルト防水の改修方法は、主に以下の2種類です。
- カバー工法
- 撤去工法
それぞれ見ていきましょう。
カバー工法
カバー工法は、既存の防水層がそこまで傷んでない場合に採用される改修方法です。傷んでる箇所を補修し、その上から新たに防水を施します。アスファルト防水の場合、アスファルトを撤去するとそれだけ大掛かりな工事になります。そのため、撤去はせずにその上からカバー工法でウレタン防水などの別の防水工事を施すケースも少なくありません。
カバー工法を行う場合は、適切な下地処理や、新たに施工する防水材との相性の見極めが必要です。
撤去工法
撤去工法は、既存の防水層の傷みが激しい場合に採用される改修方法です。既存の防水層をすべて撤去し、新たに防水工事を行います。
新築時と同じ仕上がりになるというメリットがある一方で、撤去の手間がかかるほか、撤去後の廃材処理費用も膨大になりやすい点がデメリットです。
ビルやマンションの防水ならアスファルト防水が最適
耐久性が高く耐用年数が長いアスファルト防水は、ビルやマンションの屋上防水に最適です。しかし工法によっては煙や臭いが発生するため、常温工法・トーチ工法・熱工法のどれを採用するか事前によく見極めておきましょう。また、防水層の劣化を防ぐためにも、定期的なメンテナンスは欠かせません。
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